「コロナ不況の打開政策」の柱としての全国一律最賃制・時給1500円の実現に向けて

2021.01.30 
梶哲宏(全労連・全国一般東京地本副委員長)

1,民主党政権となった米国では、コロナ不況対策の戦略を明確化し、国内戦略としてコロナウイルス対策を最優先課題として位置付けた。

(1)世界人口の4%の米国でコロナ感染死者が20%を占めている現状を受けて、医療体制の強化・拡充を図り、その上に立ってワクチン接種を急速に進める構えを作っている。
 トランプ政権時代のコロナ対策を100%転換し、マスク着用などの予防と、検査・保護、医療の拡充に資金投入するとしている。同時に、第1に国民生活への補償支援、救済を合わせて手がけた。第2には最賃時給15ドル(日本円1500円、年収換算315万円)へ向けた大統領令に署名、連邦政府の公務員の最低賃金時給とし、公契約の発注・委託・外注費などもこれを下まわらないこと、とした。

(2)そのために、新たな調整(会計予算は10月からスタートしている)として追加予算200兆円を確保するとした。
 すなわち、一人ひとりの命の補償を最優先する基本戦略の下に経済打開策として最賃15ドルとし、消費購買力を上積みすると共に米国GDP18兆ドルが低下している中でのテコ入れである。この補正予算の規模は通常の国家予算=4兆7000億ドルの50%近いもので、日本円に換算すると200兆円の規模の予算を投入するということになる。

2,日本では、GDP500兆円が30兆円割り込むのはもはや既定の事実であるが、菅内閣がやっているのはクチでは「支援する」と言いつつ安倍内閣からの姿勢を受け継いで「補償はしない」という冷酷なものである。検査数は世界と比較して極端に少なく、罹患者保護は医療崩壊によって”自宅待機”という名で自己責任とばかりに”自宅放置”されている状態であり、この先自分の命の行く先も分からない。失職や生活破綻に対する抜本対策も打ち出さず、”GOTO”で大企業へのバラマキ政策に終始している。最低賃金引上げは事実上凍結され、春闘も大企業は「出せない」と早々に言い切り、更なる利益保全をめざして体制を固めている。国民はかつてない不安の中にいるというのが現状である。 

(1)政策(=政治)の転換を図るために、チカラを集中する
①コロナ政策要求で緊急行動を企画し春闘を闘うことが求められている。
 「命を守れ!医療を守れ!検査・保護・補償を!」を最優先する春闘を闘うために、”宣伝と国・自治体要請行動”を起こしながら、署名に取組み、抗議の声をあげ、波を作り出すことが待たれている。
②個別企業に要求すると同時に国にも自治体にも大企業に対しても、闘うチカラを向けなくてはならない時である。行動を自粛しても市中感染が広がっている状態では個人の努力では感染から逃れられない。抗議や宣伝行動をむやみに「自粛」するのでなく、目に見える行動を展開することが必要である点を問いかけ続けることが必要である。
③国の予算を投入してコロナ不況打開策をとらせること。
 第1に、労働者の40%を占める2400万人は年収300万円以下であり、この層の賃金を最賃時給1500円に引き上げることで、300万円以下の労働者をなくす。
 そのことで
―→消費購買力を20兆円上積みすることになる。
―→2400万人の半数1200万人は大企業と国・自治体の支払い能力のある使用者であり、公契約など事業の発注者責任とあわせて支払いを義務付ける。
―→残り半数1200万人を抱える中小企業には、国の資金で最低賃金支払いを保障し、取引の是正などを通して3~5年で順次自立支払いに移行する。
 国の中小企業支援事業として、10兆円ずつ投入したとしても、コロナ不況から日本経済=中小企業と国民生活を立て直すことは、この先3~5年はかかると言われるコロナによる打撃からの回復のためには必須の資金である。

  第2に、過剰な負担過ぎる弱者の所得税を是正すること。
 (イ)最賃引き上げで年収300万円以下をなくした場合、税率を引き下げても税収は向上する。
  <現状>    <改善>
  0~195万円:5%→0%(生計費非課税原則)
 195~330万円:10%→引き下げ
 330~695万円:20%→  〃
 695~900万円:23%→  〃
 900~1500万円:33%→据え置き
1500~4000万円:40%→  〃
4000万円以上 :45%→ランク別に引上げ  

 (ロ)税の大企業優遇措置を元に戻す。それだけで約12兆円の税収増となる。(明治大学・野中教授試算)
 第3に、大企業は400兆円以上の内部留保を積み上げているが、コロナ不況打開へ向けどんな社会的役割を果たすのか、「中小企業が最賃を引き上げられない」というのなら、どのように還元するのか、国民や中小企業や地域との共存を考え実行する責任を追求する。

3,全労連の主導で、研究者と労働組合の単産・地域活動者との共同による「全国一律最賃制問題の検討会」を
(1)米国オバマ政権が、2008年リーマンショック直後の大不況を回避するべく内需拡大に力を注いだ政策をもう一度見直し検証することが求められている。
 ―→最賃の大幅引上げと中小企業支援、国内投資促進が位置付けられていた経過を検討
 ―→バイデン政権がやろうとしている政策の学習と検討

(2)日本の菅内閣「新成長戦略」の具体策を検証すると、コロナがらみで巨額の補正予算支出、年度内に更に20兆円。但し、医療助成関係はわずか2兆円でしかなく、”GOTO”他大企業向け予算が山盛り。来年度予算も低所得層や中小企業や地方経済への政策や予算措置はない。あたかも中小企業は不要な存在(ゾンビ企業)であり淘汰の対象であるかの誤った認識や、雇用によらない働き方の拡大による労働者の権利はく奪・労働運動弱体化が並べられている。(東京電力による工事作業者の雇止めや、学研HDに見る塾講師の無権利状態の拡大)

(3)当面、最賃法改正の要綱を更に練り上げる緊急会議が必要ではないか。

以上
2021年1月29日
全労連と東京地評全労連協議会有志との懇談会