新型コロナ感染拡大の歴史的局面にどう臨むか

2020.10.17 
梶 哲宏(全労連・全国一般東京地本副委員長)

労働運動の現場から、今日の国民生活の危機をどう捉え運動をどう構えて対応してゆくべきか、検討・討議の内容を報告する。

はじめに
 振り返ってみれば、コロナ感染以前から日本社会は「深刻な国民生活の危機の状況」にあった。もちろん新型コロナ感染拡大によって生命・健康と暮らしの危機が増幅されているのはまぎれもないことである。
 しかし底流となっている国民生活の危機と経済の停滞は、コロナ感染以前から重大局面にあった『低賃金化と低収入、貧困増大という格差のガチガチの社会構造の下で国民生活は深刻な困難』に直面していたのだ。
 ”コロナが治まらないうちに併行して景気対策をすすめればあたかも労働者・国民の生活は打開される“かの情報が広がっているが、惑わされてはならない。
 今、緊急に取るべき施策は“一人ひとりの健康と命を守る”ことである。しかし一方で“新型コロナ感染が治まるまで賃上げも自粛、生活も自粛”し、“自助・共助”が先で最後に“公助”ということでよいのか。これではコロナ対策はほどほどで国民の命は犠牲になり大企業だけが大儲けし、貧困化を進めてきた社会構造はそのままで、国民生活回復にはつながらない、ということになる。
 コロナ対策も国民生活打開も、自粛と自助・共助論の下でただ待っているわけにはいかない。今の国民・労働者が直面している困難の原因へ目を転ずることである。

1,低賃金化と格差の社会構造をどう打開するのか
(1)梶小論「原因をたどり打開は全国一律最低賃金制確立を軸に構える」――を参照
 1)21世紀初頭の日本の貧困と低賃金はどう進んできたのか
 ・95日経連「これからの日本的経営」――非正規・低賃金雇用へ」
 ・97年独禁法緩和と持株会社解禁
  ――子会社化と雇用破壊、差別化低賃金などで大企業の利益強化策
 ・自社株買いの自由化」、金融(ファンドなど)による買収や企業支配拡大
  ――投機資本による収奪的行動と雇用・労働条件破壊
 ・雇用の非正規化と労働法制改悪
 こうして改革・規制緩和が進む中で、金融による実体経済の支配、利益配分の大企業への集中、中小企業の疲弊、農水産業や地方の疲弊化による地方格差拡大などが進む

 2)政治によって作られた貧困と格差が社会構造化
  ――作られた「構造」は国民的要求での統一の力で作り変える――
 ・「改革」の下で97年以降、ひたすら低賃金化
 ・自営・農漁民など、勤労者は低収入化が進む
  ――「貧困」低賃金と低収入の打開に賃金の下限を制度=全国最賃制で引き上げ、独禁法などの運用強化で取引関係を適正化する。
  ――生活の最低限保障=ナショナル・ミニマムの共同要求形成=中軸に最賃を据えて(適正価格保障の論拠は「自家労賃」と「賃金」)

(2)コロナ禍の下、労働組合が使用者への要求の取組みだけに終始していてよいのか
 1)新型コロナ感染拡大で多くの企業経営が被害。しかし“その打開は国・自治体の対策”いかんにかかっている。
 ・直面する」経営困難の原因がコロナ禍だとしたら、打開の道は国・自治体に求めること
  ――そして経済社会機構の一端を担う企業経営者にも社会的責任を求めること。
 ・国・自治体に対して、労使は共同してコロナ対策を求め、国民・市民と共に最賃や取引改善、生活の最低限保障要求を共同して求め行動する。
・東京医労連から公務民間労働組合と市民団体・医療関係へコロナ対策での共同呼びかけ
  ――労働組合は、自治体から政府・行政へ国民(市民)と共同して要求の輪を拡げてゆく時

2)労働組合がコロナ対策と合わせて、「安全・安心」「賃金と暮らし」の要求で国民(市民)との共同を広げることが求められている。
①低賃金と貧困が構造化させられている時、その枠組みを取り払う
 労働者が「まともに暮らせる全国一律最賃」実現と共に、事業者が「まっとうな努力が生活改善につながる公正取引」を実現させることである。
 そのために、“最賃制を自家労賃保障と独禁法で大企業の不当廉売や買いたたき防止に結合”しなくては、まともな全国一律最賃制にはならない。
②大企業の労働組合組織率は40%もある一方、中堅企業は10%、中小企業は1%に満たない。ところが、大企業労働組合は労使協調でストライキ権の行使どころか要求すら放棄している状況の中で、私たちはどう行動すべきか。
 一つには労働三権を行使し、中堅企業職場や公務労働者が国民各層と生活向上の統一戦線を組むために「最賃と個別のナショナル・ミニマム要求で共同」すること。
二つにはトリクルダウン論が失効した今、“GDPの配分を適正化、付加価値の配分を適正化する制度を組み立てること。(日本のGDPにしめる最終消費は、最高時はかつて70%近くだったが今は55%程度まで下がっているはずである)

(3)コロナ禍だからこそ、公務職場の正職員増強や医療職場の改善は、国民と共通する要求となっている。
 国民のための医療充実をという医労連の問題提起は、正に国民と労働組合が共同するチャンスである。この呼びかけを受け止めて、
①「コロナ検査の拡充」「医療機関への支援助成と職員の生活と安全の保障」を各労働組合で要求化すること。
②自治体や国の機能が国民(住民)役立つように、今こそ共同して要求運動を起こすこと。
③労働者の賃金や権利の前進が社会の仕組みとして抑え込まれている現在、これらの要求の前進は、分断されている労働者同士の共同と国民との共同がいかに進むか、にかかっている。
 コロナ禍の下だからこそ、「反貧困」を旗印にした統一の輪を急速に前進させ得るのではないだろうか。

2,私達のコロナ対策の要求は、“社会の安心・安全”と“私の健康と命と暮らしを守る”こと、それは共同の広がりによって実現される
(1)次々に変異し見通しの立たない「厄介なコロナ」への対策は、
 ①検査こそ安心・安全に生活できる社会の一歩
 医療機関への支援助成、公立病院の大切さと、職員への支援は私達の健康と命の保障の砦
 ②早く感染を見つけて保護し治療するなら、後遺症と命の不安は減少する
 ③補償の基準は、ナショナル・ミニマム。ナショナル・ミニマムが未発展の今こそ、誰もが普通に暮らせる「最低限の保障」要求を求めてゆく時ではないか。

(2)コロナ以前に進行していた貧困と格差の広がりに対して
 1)制度要求で貧困打開を打開する
 ①全国一律最賃制と横断的熟練賃金保障要求を軸にした賃金・労働条件改善
 ②中小企業への価値配分を適正にふやす
 ③コロナで深刻化した生活や教育・医療の困難に対しての緊急補償、就学支援、失職者支援、医療支援(健康保険のない人にも)

3,コロナを転機に、日本のいびつな社会構造の是正をめざす
  労働者、国民の統一形成をめざす
(1)貧困からの脱出には、労働者、農水産、中小企業、地場・地域へGDPの再配分を拡大し付加価値の配分を増やすこと。「目先の利益」だけでは計れない価値について目を転じること。
 ①自然環境(山林、河川、耕地、海や浜)の保全へどう寄与しているか。
 ②教育、医療など生活に不可欠な分野の確保にどう貢献しているか。
 ③効率よく利益をあげるためだけに活動し、環境や教育・医療などに寄与していない事業活動に対して、どうあるべきかを提起。

(2)国連科学会議の言う「もう一つの豊かさの基準」に沿って、これからの経済活動は評価し直されなければならない。

(3)今こそ、これまでの産業政策を見直す時
 ①80年代の産業戦略はどうだったか
 ②40年間の経過からの新たな方向は
 ③GDPだけでない豊かさ追及の環境と新産業戦略検討は 以上