労研・事務局会議のために

2022.08.22 
梶哲宏(全労連・全国一般東京地本副委員長)

1,世界の経済動向と日本

世界は、ウクライナ侵攻から石油・ガス・電力等の物価上昇が始まり、コロナ対策で財政出動が各国でも広がる中、通貨の価値の下落を伴いつつ、他方では国際レートの変動を通し各国相互が収奪=犠牲転嫁しあう事態が起こって、途上国はますます困窮している。(国際的にインフレーションと不況が同時発生)
(1)コロナによる世界的停滞はコロナ収束後に回復する傾向ではあるが、コロナ対策で急増した財政支出の下でインフレを促進することになる。(部分的には税制改定で対応したとしても、財政を国債発行に頼る危険性が進む)
こうした中での経済の後退が深刻な影を投げかけており、
① EU,アメリカは賃金=最賃の引上げにより、内需拡大で経済循環を進めようとしている(資料:賃金上昇の実態)
② 物価上昇で生活が悪化し、労働者・国民は改善を求めて立ちあがる動きが目立つ。
他方、保守・右派はチカラではねのけようとする抑圧専制支配の動きも現れている。(トランプの動向、EUでの右翼の台頭等)

(2)日本では消費税10%増税と20年以上にわたる賃金切り下げの下での消費の後退・停滞構造の下で、GDPも停滞し、企業は業績悪化してきた。大企業だけに大もうけを保障する異常な状況が続いていた上に、コロナ禍を迎えている。
従って、このままだとコロナ脱出後も日本経済は回復できず、国民経済の停滞は引き続き深刻化するのは必至。
現に、賃金引き上げ・価値配分の適正化は不可欠であるが、現行最賃法の下では31円程度しか引上がらず、停滞が継続することに。(東京都最賃審議会での経営側委員の発言「最賃決定基準の支払い能力をもっと考慮すべき」)
① 更に、世界は賃金・最賃上昇策をとり、アメリカ等はインフラ・生活関連投資を行う等の経済打開策を取っているのに対して、日本はこうした海外市場だのみで内需政策をとろうとしない。―――従って、賃金・最賃引き上げをすすめないる運動を取り組まない日本の国際的地位は一層低下、国民生活はさらにひどいこととなる。
② 日本の低賃金は構造的に作り出されているのであり、
 (イ)この仕組みを解明し、明らかにしていくことが急務である。
 (ロ)地域の中小企業や地方・地場の経済が更なる不安定化と危機に陥るのに対し、最賃・賃金打開と総合してこれをいかに打開するかの政策提起が求められている。
ⓐ商業・流通サービスの困難の実態と原因
ⓑ大企業との取引における単価の引き下げ、買い叩き防止策が取られていない
ⓒ公務・公共部門への企業の参入=営利化をテコに、政府に財政支出削減、そして中小企業経営圧迫や社会諸法の事業の困難、危機の深刻化が生じ、国・自治体が低賃金構造を促進・拡大して社会福祉運営も困難に陥っている。(法務局乙号事務や学童保育、福祉サービス分野等)
ⓓ大企業・富裕層への税の優遇、国民への過酷な負担税制の中で更なる増税による軍拡、国の予算は国民生活への支出を削り続ける。(病院、大学、政府関連機関、学校の危機と雇用の不安定化、低賃金の下での矛盾拡大)

(3)ところが、政府は更なる危険な動きを構えている。安倍元首相等は「軍拡原資に国債増発」を主張しているように、再び国債増発をやりかねない問題がある。
① 我々は、大企業の内部留保への課税と共に、現在の税制改革と税の「あり方」を示す必要がある。
② この中で財源確保の道を示しつつ、ⓐ中小企業支援と最賃月25万円の実現の政府の責任を問う、ⓑ軍拡でなく社会公共サービスに金を回す、ⓒ大学や研究機関、学校、病院、社会インフラとしての鉄道・道路・水道・ガス・電気、再生可能エネルギー等―――この分野の産業政策を強化させることを求める
③ 軍事費拡大をやめさせることと併せて、今までの航空・宇宙、原子力推進、海外生産拡大という産業政策を総括し、改めさせること。「国民生活安定のための産業政策へ力を注ぐよう転換を求めてゆく。
―――農林水産業への助成による自給率向上と生産体制回復
―――国内の半導体事業や電気、自動車製品等の生産分野の回復、CO2削減・省エネ・脱化石産業の技術開発を強化する産業政策
―――従来の原子力投資政策はやめて、廃炉や汚染水処理の技術開発を位置づける。また、従来の航空宇宙産業は軍拡につながるものであり、これを転換し、脱CO2技術の開発や通信のための開発は軍事につながらないよう規制を強めつつ進めることと、「空や通信の主権」を取り戻す。
④ 金融の面では、ファンド規制と投資市場での投機の規制が検討されなくてはならない。金融取引税や租税回避地問題、自社株などへの課税強化といった課題が急がれる。投資市場における企業評価には、短期利益でなく、SDG‘s貢献や、労働者・国民、社会・地域への貢献果たす(安全・安心、利便等)基準での「長期的視点での評価」を対置してゆくことで、大衆投資家と企業のステークホルダーとしての労働者・労働組合を優先する提案。そのためにも、使用者概念を拡大し、団交権を広く位置付けることが重要な課題となる。

2、日本で、今、緊急に求められているのは、賃金の大幅な改善とそれによる国民生活の改善である。
軍拡に反対し、国民生活の平和的発展を求め実現させること
(1)「賃金の大幅引上げと社会保障の現状とあり方」を、「こうすれば実現できる」と示さなくてはならない。
① 低賃金の仕組みを解き明かし、
(イ)現行最賃法の欺瞞性を暴露し、「法改正」なしに大幅引き上げは実現しないことを宣言する。
(ロ)全国一律最賃制を政府の責任を伴って実現することは、ⓐ中小企業への 価値配分の適正化 ⓑ地方と地域の産業の配分適正化を促し ⓒ買い叩き、不当廉売防止を促進することになる。
(ハ)中小企業や地域経済の担い手の産業に、国の支援で労働者を確保することで、WTOのいう「自由貿易のための国内産業保護禁止」の壁を破り経済主権を守ることである。
② 世界は動いている・・・!
(イ)アメリカの賃金は、州の最賃が16ドルから18ドル、日本円で1600円から1800円に到達しており、平均賃金は700万円以上、トラック運転手1000万円以上、中間層は2000万円以上の年収という情報がインターネット上に流れており、これが更に引きあがっているという情報もある。
調査する必要がある。
(ロ)EUの賃金は、社会保障や教育費無償制度が備わった上に日本円で1500円~1600円へと引き上がってきている。EUの税は45~55%という話が出るが、日本の場合、所得税・社会保険料・消費税で30%以上、その上ガソリン税、酒税、たばこ税などが加わるとEUなみ負担なのに、社会保障は未熟で高額の教育費が自己負担となっている。
③ こうした中にある日本で急ぐべき課題は、国際的にも先進国の中では異常なまでの低水準にある日本の低賃金が作られている。その仕組みと構造の実態および打開の方向を示し、そのために「最賃法改正」を柱とする政策で、低賃金構造を打ち破らなくてはならない。
(イ)中小企業・地域経済の状態と危機の原因
(ロ)最低賃金の改正を国民共同で推進し、低賃金化を打開
(ハ)日本経済の活性化と持続可能な国民経済へ

(2)賃金と一体的に検討すべき社会保障要求、その中心に「教育」「子育て」を柱において
① 緊急に「子供の貧困からの脱却」と、「若者の今の暮らしの安心安全」を実現する要求がスタートとなる。
(イ)学費、教材費、給食費の無償化
(ロ)ひとり親家庭の子供に成年になるまで月10万円支給、低所得家庭の子ども手当(  )万円
(ハ)最賃25万円、大卒初任給28万円以上
② 青年が普通に暮らして将来を展望できる「今」を作る。
ⓐ暮らせる水準の初任給と安定雇用の保障、
ⓑ低家賃住宅の保障と、結婚した場合の家賃補助(住宅手当)、
ⓒ出産費用の無償化
③ 定年延長と改善――年齢による賃金スライド減額の禁止、物価上昇と連動した賃金引上げ、最賃補償年齢の確立
④ 派遣労働の原則禁止、労契法を潜脱する「5年更新」の短縮、正規雇用企業への助成金拡大などで正規雇用を拡大、正規雇用が当たり前の社会を実現

3、労働運動と研究者の共同の発展をめざして
(1)賃金と社会保障研究会を、地評・東京労連に作り、全労連にもこれを検討する会議を行うよう働きかける

(2)企業・産業の困難や不安定化の原因となっているものは何か、今日の危機の特徴を把握し、打開の方向を探る研究
(イ)最賃の位置づけと付加価値再配分の適正化
(ロ)持続可能な社会へ向け、公正な価値の再配分を通し、価値を社会に配分してゆく必要性(税と財政)
※企業・経営分析研究の準備
・具体的な追求、事例研究を積み重ねる
 ~個別経営の困難の原因を経営資料からあぶりだす
・研究者を募り、労働運動の中で人材を育成してゆく中で、企業分析のための事例=資料集約をスタートする
・データの集積・管理を民間単産や全労連と検討出来ないか

(3)金融・ファンド、親会社支配と労働条件改善について―――証券、銀行関連の組合との交流を総括的に行う

以上